身代わり女神は、過保護な将軍様に愛されるのに忙しい
軍施設の入口に着くと兵士が立ち、一人一人の入場を確認していた。
けれどブロードさんは入場チェックの列を素通りして奥の守衛舎に向かうと、会釈ひとつで颯爽と入場してしまった。
「……凄い。ブロードさんはノーチェックなんですね……」
流石、将軍ともなれば顔パスなんだ。
「俺含め、軍幹部が有事に入場チェックに並んでいては迅速さに欠くからな。それもあり、日頃から俺らはこれに甘えてしまっているが……ふむ、平時は並んでみるか」
ブロードさんはクスリと笑って、ヒョイと肩を竦めてみせた。
「ふふっ、急にブロードさんが並んだら皆ビックリしちゃいますからやめて下さい」
「ははっ、それもそうか」
この世界にきて、ブロードさんと共に暮らして五日目になる。そうすれば、こんな軽口で笑い合う余裕も出てきた。
やはり今が、一歩を踏み出すタイミングだと思えた。助手の仕事に就けたらそれは、自立の糸口になる。ブロードさんに負んぶに抱っこの今の状況から、脱する事が出来る。
そうしたら少しだけ、自分に自信が持てるような気がした。