身代わり女神は、過保護な将軍様に愛されるのに忙しい
女神像は石膏彫りゆえ、色彩を持たない。
けれど俺の想像する星の女神は昔から黒髪黒目をした少女だった。きっと幼心に、星から宵闇の黒をイメージして、長じてもそのイメージを持っているのだろう。
幼い俺は、いつか彫像の女神が息を吹き返し、動き出すのだと本気で思っていた。
そうして息を吹き返した女神は俺の腕の中に舞い降りて、俺だけに鮮やかに微笑みかける。女神像を前にした俺はいつも、そんな想像に酔いしれていた。
幼い俺にとって女神は、厳しい祖父の鍛錬で軋む心を慰めてくれる拠り所だった。同時に、優しい微笑みで一時の慰めを与えてくれる女神は、俺にとって初恋でもあったのだ。
「わ! ここの星の女神像、可愛い顔立ちですね~」
隣に並んだアボットが感嘆の声を上げた。確かに、星の女神を祀る教会と礼拝像は数多あれど、こんなふうにえくぼを浮かべて微笑む女神像は他にはない。
台座の上にある小柄な女神は、俺と目線の高さが同じだった。幼い俺が幾度となく見上げた女神の微笑みが今は、驚くほど間近にあった。
高鳴る鼓動を抑え、俺は静かに頭を下げた。国の安寧を、星の女神像に祈った。