身代わり女神は、過保護な将軍様に愛されるのに忙しい
「いや、中の患者は恐らく兵士ではないだろう。クレイグスは腕がいい。クレイグスの腕を知る町医者時代の患者たちが、ツテを頼って連れてきている。……本来は問題なのだが、静観している」
ブロードさんはきまり悪そうに苦笑して、声を低くして告げた。
「そうだったんですね」
クレイグス医師は、名実ともに優れた医師であるらしかった。
患者さんの嘔吐が止む。ちょうど同じタイミングで、医務室に新たな訪問者があった。
「クレイグス先生、家内の治療は終わりましたでしょうか?」
「おぉ、ちょうど終わったところじゃ。連れて帰ってよいぞ」
クレイグス医師がシートを割って、顔だけを覗かせた。
「先生、ありがとうございます! よその先生には匙を投げられていましたが、クレイグス先生のおかげで家内はみるみる回復しています。またお願いいたします!!」
慣れた様子でご主人は、ぐったりした奥様を肩に抱き、二人は医務室を後にした。
しばらくして後処理を終えたクレイグス医師が、首をコキコキいわせながら奥から出て来た。