身代わり女神は、過保護な将軍様に愛されるのに忙しい

「待たせたな。おぉ、どうしたブロード将軍? 今日は可愛いお嬢さんを連れているじゃないか? お嬢さん、さっきは薬をありがとうよ。まぁ座ってくれ」

 クレイグス医師は気安い人柄のようだった。自身の診察椅子と患者用の椅子を私たちに勧めると、自分は奥から木製の荷物台を引っ張り出して腰掛けた。

「レーナという。先日、俺が手元に引き取った」
「初めまして、レーナといいます」

 対峙したクレイグス医師の額には汗が浮かんでいた。

 先の治療が大仕事だったに違いない。患者さんはかなり激しく嘔吐していたから、その処置は大変だったろう。

「……ほう、異国の娘さんか。美しい目をしておる。儂はクレイグスじゃ」

 クレイグス医師は私の容貌にも必要以上には触れず、優しい目で微笑んだ。

「クレイグス、また秘方を頼まれたのか? あれは秘方での治療だろう?」

 秘方? ブロードさんの語った秘方という言葉が気になった。
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