身代わり女神は、過保護な将軍様に愛されるのに忙しい

「あぁ、あのように嘔吐の副作用もある。儂とて積極的に施したい訳ではないのだが、乞われれば無下にもし難い」
「……あの患者さんは胃腸炎じゃないんですか?」

 激しい嘔吐は、てっきり胃腸の疾患かと思っていた。ところが、嘔吐は治療の副作用だと言う。

 気付いた時には思わず、疑問を声に出していた。

「患者は重い水腫を患っておる。何もせねば命が消えるのを待つばかりじゃ。儂とてこんな荒療治は疑心暗鬼なんじゃが、聞き付けた者らが放っておいてくれん……困ったものじゃよ」

 クレイグス医師は特大の溜息を吐いた。

「……茶色の瓶の中身、もしかしてジギタリス、ですか?」

 私はランドーラ王国にきてから日がな一日部屋に籠っていて、時間つぶしと言ったら本を捲るくらいしかする事が無かった。

 幸運にも読むには不自由しなかったから、本からランドーラ王国の歴史や文化体形、技術水準、多くの情報を得た。
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