身代わり女神は、過保護な将軍様に愛されるのに忙しい
水腫、荒療治……、中世イングランドに似たこの地で、土着的に行われる民間療法。
これらを考え合わせれば、思い至らない訳がなかった。
「なんと! お嬢ちゃんは薬草に造詣が深いのかい!?」
けれど、私がジギタリスの名前を口にした瞬間、クレイグス医師は座っていた荷物台を倒す勢いで立ち上がり、私の腕を掴んだ。
そればかりじゃない、隣のブロードさんもギョッとしたように、目を丸くして私を見た。
「ジギタリス、だと?」
そうしてまさかというように、ジギタリスの名を反芻した。
「お嬢ちゃんは、どこぞで医者でもしているのかい!?」
動揺する私に、クレイグス医師は畳み掛けるように言葉を重ねた。
「い、いいえ、とんでもない! 私に実務経験はないんです。もっと言うとまだ勉強中の身で、医学に関しての専門知識もなくて、生物や化学に少し知識の下積みがあるだけなんです」
私が医師だなんて、とんだ誤解だ。私は慌てて弁解した。