身代わり女神は、過保護な将軍様に愛されるのに忙しい
「その知識が専門的な知識でなくてなんだというのか! では、ジギタリスの事はどうして知っていた!? 儂は誰一人、ジギタリスの事を伝えてはおらん!」
クレイグス医師の鬼気迫る迫力に、私は気圧されていた。
「クレイグス、落ち着け。レーナが戸惑っている」
ブロードさんがクレイグス医師を制す。クレイグス医師はハッとしたように、掴んでいた私の腕を解いた。
「す、すまん、お嬢ちゃん」
「い、いえ」
クレイグス医師は腕を解いてくれたけど、その目には追究の色がありありと浮かんでいた。
何をどう話したものか、私は一人途方に暮れた。
「クレイグス、レーナの容姿が全ての答えだ。今は染色しているが、その本来の髪色は、瞳と同じ黒だ」
けれど私に代わり、隣からブロードさんが端的に告げた。
「な!?」
クレイグス医師は目を見開き、驚嘆している。
ブロードさんが包み隠さずに伝えた事に、私もまた驚きは隠せなかった。けれどブロードさんが伝えたという事は、クレイグス医師は伝えるに足る信用のおける人物という事だ。
「……そう、そうか。……そうか」
クレイグス医師は、自分自身を納得させるように何度も頷いていた。