身代わり女神は、過保護な将軍様に愛されるのに忙しい
レーナは俺がクレイグスに紹介した翌日から、助手として勤務を始めた。レーナの勤務初日、俺はいても立ってもいられずに執務を抜け、レーナの様子を見に医務室に足を運んだ。
俺が行った時、レーナは風邪を引いた子供を優しく抱き上げて笑っていた。
シンプルな白いエプロンが、とてもよく似合っていた。天使のように清らかで美しいレーナの姿に、俺は言葉をなくして見惚れていた。
「過保護じゃのぉ~」
しかし、クレイグスの横槍でハッと我に返った。
「え!? ブロードさん、来て下さったんですか!」
俺に気付いたレーナが、目を丸くして駆け寄った。
「……いや、ついでがあって寄っただけだ。その、問題なくやっているようだな。ではな」
「え? あ、はい」
素直に告げる事が憚られ、くるりと踵を返すと、足早に医務室を後にした。
「ふはははははっ」
背中から聞こえるクレイグスの笑い声は、無理矢理意識の外へ押しやった。
そしてその日は共に帰路につく道すがらでも、夕食の席でも、レーナは医務室での出来事を楽しそうに話して聞かせてくれた。
いつもより饒舌なレーナの姿に、俺までも嬉しい気持ちになった。