身代わり女神は、過保護な将軍様に愛されるのに忙しい
「……女神様、どうか軍の従業者食堂の値上げ案が見送りになりますように。各種備品が無償支給になりますように。給金が上がりますように」
ぶつくさと煩い隣を睨みつけるが、真剣そのもので祈りを捧げるアボットは気付きもしない。
全く、困った奴だ。
「ついでに女神様、堅物のブロード様もいい年です。可愛い彼女の一人も授けてやって下さい」
「……おい、アボット」
ついでの祈りとやらにギョッとして、隣のアボットを見る。
アボットはニヤリと笑ってみせた。
「ブロード様、一通り祈りも終わりましたし、行きましょう! 俺さすがに腹も減ってきました。あ、俺が繋いだ二匹を連れてきますんで!」
言うが早いか、慌ただしく駆けていくアボットの背中に苦笑した。
「全く調子のいい奴だ」
名残惜しく、最後にもう一度女神像に視線を向ける。
その一瞬、女神像が笑みを深くしたように見えたのは、きっと俺の気のせいに違いない。