身代わり女神は、過保護な将軍様に愛されるのに忙しい
翌日は、こっそりと足を運んだ。外から窓の側に回り込み、そっと医務室内を窺った。
そうすると、レーナは腰を痛めて運ばれた兵士に湿布薬を貼ってやり、微笑んでいた。
生き生きとしたレーナは、俺の目に眩しい程だった。しばらく、くるくるとよく動くレーナを見て、そっと踵を返した。
三日目は、医務室に向かおうとしたところをアボットに捕まった。
「ちょっとブロード様! 昨日、一昨日とサボってて、今日という今日は流石の俺も見逃せません。今日は会議に行きますよ!?」
「いや、しかし……」
振り切って医務室に向かおうかとも思ったが、昨日一昨日と何事もなかったのだから大丈夫かと思い直した。
「分かった、今日は出席する」
「ったりまえです!」
仕方なく俺は軍会議に出席し、医務室に行く事を諦めた。
そうして会議の後、足早に将軍執務室に戻った俺を待っていたのは、クレイグスからの予期せぬ伝言だった。
その日医務室には、解体作業中に左腕を潰した作業員が一縷の望みを託し、凄腕のクレイグスの元に運び込まれた。しかしクレイグスの腕をもってしても温存は難しく、作業員はそのまま左腕の切断手術を受けたという。
その処置に、レーナは半狂乱の悲鳴を上げて、手伝いの者に診療所の外に運び出された……。