ネェ、オレヲアイシテ? Ⅱ~Buddy or Family~
翼咲はスニーカに履き替え、玄関から出ていこうとする。
「おい翼咲!!!行くとこなんてないだろ!俺を救うつったの何処のどいつだよ!!」
俺は、翼咲の肩を掴んだ。
「……俺がいなくたってどうにかなるだろ。白龍は東京No.2の強い族だぜ。
………ごめん。
俺さ、やっぱお前みたいに他人のこと自分のことより優先できねぇや」
「痛っ!」
バンッと腹を押され、玄関の壁際にあった靴箱に俺は身体をぶつけた。
「……生きろよ、バカ兄貴」
俺の顔の真横に翼咲の拳が突き刺さった。拳からは、真っ赤な血が流れている。
拳で傷ついた靴箱は粉々に砕け、床に白いプラスチックの破片がこぼれ落ちた。
翼咲は、身動きもできない俺の履いていたスキニーのポケットに手を突っ込み、俺のバイクの鍵をそこから取る。
「おいっ、翼咲……ぐっ!!」
声をかけた俺の腹を一切の容赦もなく殴り、
翼咲は悲しそうに笑った。
「つばさ……」
意識が遠のいていく中で、翼咲が玄関から家を去っていく足音だけがやけに大きく響いていた気がした。
そして、無免の癖にバイクを走らせる弟の走行音を聞くのを最後に、俺はその日気を失った。