もっと、めちゃくちゃにして。←ベリーズカフェ限定公開



お母さんとキッチンに立ったことなんて…ない。


あたしの料理の技術は、小学校や中学校での調理実習で習ったことぐらいしかない。


だからお菓子作りもろくにできなくて…



『料理、普段しないだろ?』


「うん。ほんと、久しぶり」


『西山さん、料理上手いから習えばいいよ?』


「…いいのかな?」



今日会ったばっかりの見ず知らずの子だよ。


教えてもらえるわけなんて…



『西山さん、藍に料理教えてあげてくれますか?』


「ちょっと、うち…拓叶!」


「お!藍ちゃん料理習いたいの!?」



テーブルを拭き終わって、手を洗っていた内山さんがあたしをキラキラした目でみつめる。



「私…料理できなくて…
だけど、色々料理してみたくて…」


「その気持ちで十分よ!
おばさんがいっぱい、教えてあげる!」



にっこり微笑んでくれて、もう…泣きそうになった。


こんなあたしにも、微笑んでくれる人がいるんだ。

教えてくれる人がいるんだって。



「ありがとうございます!」



久しぶりにハッキリ言葉を発して、深く頭を下げた。



「まぁまぁ、そんな頭下げなくても!
今日はとりあえず、カレーね!」


「はい!」



嬉しくて嬉しくて、横にいる内山くんを見ると内山くんはにっこり笑ってくれた。


料理、できるようになるかな?


お菓子作り、できるようになるかな?


頭の中でたくさん楽しいことが想像できて…



『藍の手料理、楽しみだな』


「…食べてもらえるように頑張るね」


『うん。気長に待つからさ』



なんでだろう…


ここにいる内山くんはよく笑う。


ゆいちゃんとりょうたくんがいるからかな?





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