もっと、めちゃくちゃにして。←ベリーズカフェ限定公開
そんなこともあったな…。
でも、これ以上思い出したくない。
思い出す前に、目をぎゅっと瞑ってパッと開ける。
大丈夫。
大丈夫だ。
聴こえない…聴こえない。
『まぁ、俺はショート派だけど』
「そっか」
『ほら、もう乾いた』
ドライヤーのスイッチを切ると、あたしの頭を優しく撫でた。
そう言えば、小さい頃お父さんにこうして髪を乾かしてもらったことあったな…
もう随分昔だ。
最近のお父さんの記憶っていつだっけ。
…やめよう。色々思い出すのは。
だってもう、家族なんかじゃなくて“他人”なんだから。
「ありがとう」
『じゃぁ、俺も入ってくるか。
あ、先に寝ててもいいからな。
今日は疲れただろ?』
「うん、でもまだ起きてるよ」
そう言うと笑って、リビングから出て行った。
一人になった途端、今日のことを思い出す。
もう、杉崎家には戻れないんだ。
苗字の意味…ないんだ。
もう二度と、家族で集まることないのかな。
って、なんでそんなこと考えるんだろう。
離れられて嬉しいハズなのに…