龍使いの歌姫 ~幼龍の章~
昔々、まだ龍族がこの国を支配していた頃。

神龍が治めていたこの国には、二つの民がいた。

赤い髪を持つ赤の民と、白い髪を持つ白の民。

両者民には不思議な力があり、龍族と心を通わし、お互いを信頼しあいながら生きていた。

年月を重ねるごとに、他所から人間達がこの国にやって来たことで、国は更に大きくなった。

人々は龍族を恐れながらも、龍族の力に服従し、神龍を神として崇めた。

だが、ある日先代の神龍が病にかかり、人々は不安に陥った。

神龍がいなければこの国は滅んでしまう。誰か神龍を救ってくれと願った。

その時、赤の民の長が立ち上がり、人々に言った。

「私が神龍様をお救いしましょう」

赤の民には不思議な力がある。

人々は安心して、赤の民の長に全てを任せた。

だが、赤の民の長は、神龍を殺してしまった。

白の民でさえ、ましてや同じ龍でさえ神龍を殺すことなど出来ない。

神にも等しい力を持つ存在を、誰も殺せないと思っていた。

けれども、赤の民の長は神龍を殺してしまえた。

人々はそれを知り、赤の民を神を殺した大罪人と呼び、一族を根絶やしにしようとした。

その時、赤の民と共に生きてきた白の民が、赤の民を庇った。その事で、白の民も同罪と見なされ両方の民は葬られた。

だが、白の民よりも赤の民を人々は恐れた。だから、赤い髪を持って生まれた子供をディーファ(赤い悪魔)と呼んで忌み嫌った。

そして、新しい神龍が国を治め、後に人々は神龍に支配されることに反発した。

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