龍使いの歌姫 ~幼龍の章~
「ここがお父さんの仕事場。……そこに木があるでしょう?あそこを上って、二階の窓から入るの。風を通すために、いつも開いてるから」
見上げると、丁度窓に寄り添うように、大きな木が生えている。
「まずは私が行くね!」
そう言い終わるや否や、ノノンは器用に木を上ると、窓へと飛び移る。
レインも木へと近付く―がその時、扉が開いた。
「!」
レインは咄嗟に木の後ろに隠れる。
濃い髭を生やした男が、何やらモゾモゾと動いている大きな袋を背負って去っていった。
あの人が、ノノンのお父さんだろうか?
「お姉さん?」
ノノンが控え目に声をかけると、ハッとしてレインは木を上って窓へと飛び移る。
すべて木で出来ているため、床に降りるとギシッと軋む音がした。
「さっき、ノノンのお父さんらしき人が、大きな袋を持って出ていったよ?」
「……もしかしたら、赤ちゃんの儀式をしに行ったのかも」
昨日も聞いた儀式という言葉に、何故かレインの心に不安が募っていく。
嫌な予感がするのだ。
「とにかく、下へ降りよう?」
ノノンが言うと、レインは黙って頷く。
階段を降りて下へ行くと、そこには大きな机と棚があった。
机の上には、正六角形にカットされた細い板が、いくつも組合わっており、まるで蜂の巣のようだ。
一つの六角形には綿が敷かれており、割れた卵が置いてある。
勿論、数は少ないが、割れてないのもあった。
「……これが………竜の卵」
形はティアの卵と同じだが、大きさはティアの時よりも大きい。
それに、色はくすんだ灰色をしている。
「お姉さん!薬草ここにあったよ!」
レインが卵を眺めていた間、ノノンは棚を漁っていた。
ノノンの側へ寄り、薬草を眺める。
「!……これは」
レインも見たことがない、灰色の薬草が沢山詰まっていた。灰色の薬草をつまみ、臭いを嗅ぐと、あの酸っぱい臭いがした。
恐らく、竜水の大元だろう。
「これは……何?」
「シジナ草だよ」
「「!」」
答えが返ってくるとは思わず、レインとノノンは肩を跳ねらせた。
振り返ると、先程出ていったノノンの父親が立っている。
「あの、勝手に入って申し訳ありません」
レインが頭を下げると、父親は顔の前で手を振る。
「いやいや。どうせ家のバカ娘が連れ込んだんでしょう」
バカ娘と言われ、ノノンは頬を膨らます。
「いえ。私がお願いしたんです。……本当にすみませんでした」
元々レインが頼んだことだ。ノノンは悪くない。
「君は、まだ若いのにしっかりしとるようだな。竜に興味があるのかい?」
「……はい。私は竜を見たことがありませんでしたし。薬剤師をしておりますので、薬草には目がなくて」
「はははっ!若いのに感心なことだ。そうだ、もうすぐこいつらも生まれるし、君なら特別に見せてあげてもいいが、見るかい?」
竜の誕生を見られる。そう聞いて、レインは迷わず頷いた。
「お願いします」
「お父さん!私も私も!」
「……仕方ないな。いいだろう……だが、まだ世話をさせるわけにはいかんからな。見るだけだぞ?」
父親の言葉に、ノノンはまた頬を膨らましながらも、大人しく頷いた。
見上げると、丁度窓に寄り添うように、大きな木が生えている。
「まずは私が行くね!」
そう言い終わるや否や、ノノンは器用に木を上ると、窓へと飛び移る。
レインも木へと近付く―がその時、扉が開いた。
「!」
レインは咄嗟に木の後ろに隠れる。
濃い髭を生やした男が、何やらモゾモゾと動いている大きな袋を背負って去っていった。
あの人が、ノノンのお父さんだろうか?
「お姉さん?」
ノノンが控え目に声をかけると、ハッとしてレインは木を上って窓へと飛び移る。
すべて木で出来ているため、床に降りるとギシッと軋む音がした。
「さっき、ノノンのお父さんらしき人が、大きな袋を持って出ていったよ?」
「……もしかしたら、赤ちゃんの儀式をしに行ったのかも」
昨日も聞いた儀式という言葉に、何故かレインの心に不安が募っていく。
嫌な予感がするのだ。
「とにかく、下へ降りよう?」
ノノンが言うと、レインは黙って頷く。
階段を降りて下へ行くと、そこには大きな机と棚があった。
机の上には、正六角形にカットされた細い板が、いくつも組合わっており、まるで蜂の巣のようだ。
一つの六角形には綿が敷かれており、割れた卵が置いてある。
勿論、数は少ないが、割れてないのもあった。
「……これが………竜の卵」
形はティアの卵と同じだが、大きさはティアの時よりも大きい。
それに、色はくすんだ灰色をしている。
「お姉さん!薬草ここにあったよ!」
レインが卵を眺めていた間、ノノンは棚を漁っていた。
ノノンの側へ寄り、薬草を眺める。
「!……これは」
レインも見たことがない、灰色の薬草が沢山詰まっていた。灰色の薬草をつまみ、臭いを嗅ぐと、あの酸っぱい臭いがした。
恐らく、竜水の大元だろう。
「これは……何?」
「シジナ草だよ」
「「!」」
答えが返ってくるとは思わず、レインとノノンは肩を跳ねらせた。
振り返ると、先程出ていったノノンの父親が立っている。
「あの、勝手に入って申し訳ありません」
レインが頭を下げると、父親は顔の前で手を振る。
「いやいや。どうせ家のバカ娘が連れ込んだんでしょう」
バカ娘と言われ、ノノンは頬を膨らます。
「いえ。私がお願いしたんです。……本当にすみませんでした」
元々レインが頼んだことだ。ノノンは悪くない。
「君は、まだ若いのにしっかりしとるようだな。竜に興味があるのかい?」
「……はい。私は竜を見たことがありませんでしたし。薬剤師をしておりますので、薬草には目がなくて」
「はははっ!若いのに感心なことだ。そうだ、もうすぐこいつらも生まれるし、君なら特別に見せてあげてもいいが、見るかい?」
竜の誕生を見られる。そう聞いて、レインは迷わず頷いた。
「お願いします」
「お父さん!私も私も!」
「……仕方ないな。いいだろう……だが、まだ世話をさせるわけにはいかんからな。見るだけだぞ?」
父親の言葉に、ノノンはまた頬を膨らましながらも、大人しく頷いた。