龍使いの歌姫 ~幼龍の章~
レインは兎を狩り、ティアと分けあって食べると、ティアに言葉を教えることにする。

「ティア」

『ピギィ!』

まず、ティアの名前を覚えさせようとしたのだが、ティアの名前を言うと「ピギィ」と返事が反ってくる。

「違うよ。……いい?ティ!」

『ピ!』

「ア!』

『ギィ!』

区切りながら言ってみたが、やはり「ピギィ」になってしまう。

(私の名前は言えるのになー……)

どうしたものかと頭を抱える。

「ア!」

『ギィ!』

「イ」

『ピ!』

「ウ!」

『ピィギ!』

「…………」

今日一日で全てを覚えるのは無理だろう。だが、せめてティアの名前は呼ばせたい。

「テ!」

『パ!」

「イ!」

『ピ!』

「…………ア」

さて、どう来るのかとレインは構える。

『パピー!』

「………」

パピーとは、ティアと言う意味で言ってるのだろうか?

「ティア?」

『パピー!』

(どうしよう。ティアがパピーって名前に……)

このままでは駄目だ。ならばと、レインはその辺の木の棒で、地面に文字を書く。

「これは?読める?」

『?……トロロ!』

リンゴと書いてある文字を見て、何故とろろと返ってくるのだろうか。

(なんか知らないけど、とろろって美味しそうな響きだよね……)

勿論、この世界にはとろろはないが。

「まー、ある意味新しい言葉を覚えたし、今日はこれくらいにして、進もうか」

『タロウ!』

今のは返事だろうか?それとも誰かの名前だろうか?

「………」

まだとろろと言われる方が良かったなと、レインはため息を吐いた。
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