龍使いの歌姫 ~幼龍の章~
「………うっ………?……ここは……」

目を開けると、青い空が見える。

次に左右をゆっくり見る。

どうやら森の中のようだと思うと、少年はボンヤリと昨日のことを思い出した。

「!あいつ!?……っ」

自分を切りつけた男を思い出し、少年は勢いよく起き上がった。だが、腕の痛みに顔を歪ます。

「っ………?……これは……」

自分の腕に巻かれているものに気付くと、眉を潜める。

一体誰が巻いたのだろうか?

次に、自分が寝ていた地面へと視線を移す。何やら柔らかいと思っていたが、絨毯が敷かれていたらしい。

(………誰が………)

どこの誰が、自分を助けたのだろう。もし人間だったら、一体何が目的なのかと、少年は考えている。

すると―。

『ピギィ!』

「!……お前は……龍の子供……」

とことことこちらにやって来たのは、金色に輝く鱗を持った幼龍。

「お前は、何故こんな所にいるんだ?人間の村から逃げてきたのか?」

どことなく、この輝きには見覚えがある気がするが、まだそんなに頭が働かない。

『ティア!』

「……は?」

『ティア!』

聞き返すと、幼龍はまた同じ言葉を繰り返した。

「………ティア?」

『ピギィ!』

今度は首を大きく縦に振って頷く。

(ティア………ティア………どこかで………)

どこで聞いたのだろうと記憶を辿る。

だが、その時―。

「ティアー?」

『レイン!』

森の奥から、人影がこちらに向かってくるのが見える。

手には、何やら見覚えのある槍を持っていた。

人影が開けたこの場所に近付くと、日の光に照らされ、姿が浮かび上がる。

「………お前……は」

赤い髪に赤い瞳。髪が肩より少し下まで伸び、背も少し伸びていたが、幼さの残るその顔は、三年前と変わらない。

驚きに目を見開く自分に、少女はニコッと笑う。

「具合はどう?」
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