龍使いの歌姫 ~幼龍の章~
「………」
言葉を発することなくレインを凝視する少年に、レインは少し困った。
少年が目覚める前に森で山菜採りやら、狩りやら必要なことをやっていた時、斜めに傷がついた木を見付けた。
気になって側へ寄ると、根元には長い槍が置いてあり、少年のものだと分かった。
そして、それを持って帰ってきたのだが。
「………」
「………」
さて、どうしたものかと眉を下げる。
「……何のつもりだ?」
「え?」
「何故僕を助けた?何を企んでいる?」
ようやく返事を返してくれたが、思いっきり警戒されてしまっている。
レインは困ったように指で頬を掻いてから、少年に槍を差し出す。
勿論、刃のついてない方を向けて。
「これ、貴方のでしょう?」
少年は黙ったままレインを見つめていたが、暫くして槍を受け取った。
『ピギィ!リンゴ!』
ティアがレインの元へとことこ走り、足に絡み付く。
「リンゴは昨日ティアが食べちゃったでしょう?代わりに木の実見付けたから、それ食べようか」
『ギョイ!』
頷くティアに、レインは苦笑する。返事を「うん」か「はい」にしようかとも思ったが、ティアが「ギョイ」を気に入ってるので、今はまだそのままで良いかと直していない。
「そいつは、三年前のあの時の卵か?」
少年はティアを見ながら、呟くような声で言ったが、レインには聞こえていた。
「そうだよ」
頷くと、訝しげな視線をティアに送る。
「それにしては、生まれるのが早い。それに、こいつは生まれてからどれくらい経っているんだ?」
「ティアが生まれたのは、一週間以上前」
レインの言葉に、少年は衝撃を受けたように固まる。
(一ヶ月も経たないうちに生まれ、言葉を理解し、喋ったのか。それに、三年しか経っていないのに……)
ティアがレインに拾われる前の年月にもよるだろうが、ティアの大きさの卵では、まだまだ生まれない筈だった。
「私の師匠がね、ティアは特別だから、三年で生まれるよって言ったの。それに、大人の龍には二年でなれるかもしれないって」
「……あり得ない。そんなこと」
自分の相棒でさえ、生まれるのに十年かかったらしい。物心がついた時に生まれ、その後は兄弟のように育ってきた。
「でも、本当のことだよ。今ティアがここにいるのが、何よりの証拠だよ」
そう言って、木の実を頬張っているティアを見るレインを真似て、少年もティアを見る。
確かにそうだと、認めざるおえないだろう。
「あ!そんなことより、そろそろ薬草交換しなきゃ。腕見せて?」
「寄るな」
レインが一歩少年へ近付くと、少年は槍をレインに向ける。ご丁寧に刃を向けて。
「何故僕を助ける?僕は三年前、こいつを連れてこうとした相手だ」
「……目の前で怪我をしていたから、助けただけ。それ以上の理由が必要かな?」
首を傾げるレインに、少年は黙ったままだ。
「それに、過去は過去。もう過ぎてしまったことを、今さら言ってもしょうがないでしょう?」
そう言いながら、レインは笑った。
「…………」
少年は槍を下げ、地面へと置き、レインから視線を反らす。
治療を承諾してくれたと取っていいだろうと思ったレインは、少年の側に寄ると、屈んだ。
「もう知ってると思うけど、その子はティア。私はレインだよ。……貴方は?」
「…………アル」
言葉を発することなくレインを凝視する少年に、レインは少し困った。
少年が目覚める前に森で山菜採りやら、狩りやら必要なことをやっていた時、斜めに傷がついた木を見付けた。
気になって側へ寄ると、根元には長い槍が置いてあり、少年のものだと分かった。
そして、それを持って帰ってきたのだが。
「………」
「………」
さて、どうしたものかと眉を下げる。
「……何のつもりだ?」
「え?」
「何故僕を助けた?何を企んでいる?」
ようやく返事を返してくれたが、思いっきり警戒されてしまっている。
レインは困ったように指で頬を掻いてから、少年に槍を差し出す。
勿論、刃のついてない方を向けて。
「これ、貴方のでしょう?」
少年は黙ったままレインを見つめていたが、暫くして槍を受け取った。
『ピギィ!リンゴ!』
ティアがレインの元へとことこ走り、足に絡み付く。
「リンゴは昨日ティアが食べちゃったでしょう?代わりに木の実見付けたから、それ食べようか」
『ギョイ!』
頷くティアに、レインは苦笑する。返事を「うん」か「はい」にしようかとも思ったが、ティアが「ギョイ」を気に入ってるので、今はまだそのままで良いかと直していない。
「そいつは、三年前のあの時の卵か?」
少年はティアを見ながら、呟くような声で言ったが、レインには聞こえていた。
「そうだよ」
頷くと、訝しげな視線をティアに送る。
「それにしては、生まれるのが早い。それに、こいつは生まれてからどれくらい経っているんだ?」
「ティアが生まれたのは、一週間以上前」
レインの言葉に、少年は衝撃を受けたように固まる。
(一ヶ月も経たないうちに生まれ、言葉を理解し、喋ったのか。それに、三年しか経っていないのに……)
ティアがレインに拾われる前の年月にもよるだろうが、ティアの大きさの卵では、まだまだ生まれない筈だった。
「私の師匠がね、ティアは特別だから、三年で生まれるよって言ったの。それに、大人の龍には二年でなれるかもしれないって」
「……あり得ない。そんなこと」
自分の相棒でさえ、生まれるのに十年かかったらしい。物心がついた時に生まれ、その後は兄弟のように育ってきた。
「でも、本当のことだよ。今ティアがここにいるのが、何よりの証拠だよ」
そう言って、木の実を頬張っているティアを見るレインを真似て、少年もティアを見る。
確かにそうだと、認めざるおえないだろう。
「あ!そんなことより、そろそろ薬草交換しなきゃ。腕見せて?」
「寄るな」
レインが一歩少年へ近付くと、少年は槍をレインに向ける。ご丁寧に刃を向けて。
「何故僕を助ける?僕は三年前、こいつを連れてこうとした相手だ」
「……目の前で怪我をしていたから、助けただけ。それ以上の理由が必要かな?」
首を傾げるレインに、少年は黙ったままだ。
「それに、過去は過去。もう過ぎてしまったことを、今さら言ってもしょうがないでしょう?」
そう言いながら、レインは笑った。
「…………」
少年は槍を下げ、地面へと置き、レインから視線を反らす。
治療を承諾してくれたと取っていいだろうと思ったレインは、少年の側に寄ると、屈んだ。
「もう知ってると思うけど、その子はティア。私はレインだよ。……貴方は?」
「…………アル」