龍使いの歌姫 ~幼龍の章~
レインが小屋を出て暫く、数人の足音が聞こえた。

レオンは小屋の外で、足音の主達を迎える。

「ようこそ。こんな森の奥まで、ご苦労様」

ニッと笑みを浮かべると、先頭にいた茶色のマントの男が前に出る。

「……幻惑の魔法使い。姫様の命により、お前を殺す」

背中に背負った大剣を抜き、レオンへと向けた。

「かつての友人なんだし、レオンと前のように呼んでくれてもいいのに。竜騎士……いや、ロラン」

男―ロランは、青い瞳でレオンを見ている。その瞳の奥には静かな殺気を纏って。

「良くここが分かったね?」

「お前の気配は独特だからな」

ロランの言葉に、クスッと笑ってしまった。独特の気配―つまりは、魔力。

「なるほどね。でも、それだけが理由じゃないと思うけど?」

「……レオン。何故城から姿を消した?何故龍王様と姫様を裏切った」

「裏切るもなにも、別に僕は王家に仕えていたわけじゃない。僕はいつも、自分の思うままに生きてる。そして、城から去ったのは、そうするべきだと思ったからだよ」

ただ静かに微笑み、思考を読ませないこの男が、ロランは苦手だった。

友人というが、本心を見せてもらったことはなく、レオンが勝手に友人扱いしていただけだ。

「……戻る気はない。そう言うことでいいのだな?」

「そうだね」

「なら………死ね!」

言葉と共に踏み込むと、大剣を振り下ろす。

だが、レオンは避けなかった。

「!!」

頭から真っ二つに切り裂かれた体からは、血が出ておらず、中身はすべて黒に染まっていた。

そして、光の粒と共にレオンの姿はかき消える。その光景に、ロランの後ろで成り行きを見守っていた部下達は狼狽える。

「血を流すことなく消えたぞ?!」

「やはり、化け物だ!」

「だが、これで反逆者は消えた」

お互いに顔を見合わせながら囁きあっている部下を横目で見ると、ギリッと奥歯を噛み締めた。

< 9 / 60 >

この作品をシェア

pagetop