毛布の上で溺れる



それなら、わたしが見届けなきゃ。彼らが、天国に逝けるように。


それから数分もしないうちに、一匹の魚が白い腹を上にして、ぷかりと浮かんできた。


それを追うように、もう一匹も動かなくなった。


これは悪夢の再現だ。


彼は居ない。



目覚められない。


小瓶が沈んだ水槽の中は、もう楽園じゃなかった。


彼は、まだ帰ってこない。




目が、覚めた。いつのまにか眠っていたようだ。


頭の芯が鈍く痛む。こめかみを押さえながら身体を起こす。


いまだに彼の香水の匂いがベッドに横たわっていることを知った。


ぼんやりとした意識が段々と鮮明になっていく。


それは痛みと正面から向かい合うことでもある。


覚醒しつつある時、不意に自分のてのひらに暖かさを感じた。



< 9 / 11 >

この作品をシェア

pagetop