絶対命令アプリ
「今でも俺のことが好きなのか?」


質問されて、あたしは思わず颯樹から視線を逸らせた。


あたしの気持ちは本性を現した颯樹へは向かっていない。


好きだった気持ちは空中で破裂して、今はただ、その破片が重力に逆らうことなく落下していくばかりだ。


「でも、頑張ってた颯樹が100%嘘だとは思えない」


あたしはやっとの思いでそう言った。


今の颯樹の事が好きだとは、言えなかったから。


「俺は自分に鞭打って無理をしてただけだ」


颯樹が苦し気に眉間に眉を寄せてそう言った。


「そうしなきゃいけない。そうした方がいいからしてただけだ」


絞り出すような颯樹の声に、なぜだか胸が痛んだ。


誰だって同じようなところはあるだろう。
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