絶対命令アプリ
美奈が助けを求めるように顔を上げるけれど、その目を見ずに教室の外へと出た。


他のクラスはもう授業が始まっているようで、廊下はとても静かだった。


早鐘を打つ心臓を鎮めるためトイレに駆け込み、冷たい水で顔を洗った。


ポケットの中に入れていた単語帳を取り出して、英単語を口の中で呟く。


そうしていると徐々に気分は落ち着いて行った。


元々A組には大きな問題児なんて1人もいない。


イジメなんてしている暇があれば、勉強を優先させるからだ。


あたしの知っているA組は確かにそんなクラスだった。


でも、なんだ?


今のA組は全く違う。


《絶対命令アプリ》を通してA組の本性が露わになって行くようで怖かった。
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