絶対命令アプリ
どうにか気持ちを落ち着けてトイレを出た。


A組はまだ授業が始まっていないようで、教室内はざわついている。


教室へ戻ろうかと思ったが、入口の手前で足が止まった。


きっと美奈がまだカリンに奴隷扱いを受けていることだろう。


そう思うと、ドアに伸ばしかけた手が動かなくなった。


手をひっこめ、教室から離れて行く。


あたしは無駄な時間を過ごしている暇なんてないんだ。


みんなに付き合うくらいなら、英単語を1つでも覚えなきゃいけない。


自分に言い訳をするようにそう考えて、渡り廊下へ出た。


廊下の両端は胸の高さまでの壁しかなく、生ぬるい梅雨の風が吹き抜けている。


重たい気分のままその壁を背もたれにして座り込んだ。


単語帳を取り出して目で追いかけて行くけれど、頭の中には美奈が四つん這いになっている光景が貼りついていた。
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