鳴かない鳥
ふと立ち止まり、空を見上げればいつの間にか暗くなっていた。
昼間の白い冬空は何処(いずこ)へ消え、真っ暗な空に星を散りばめている。
真ん丸に輝く月が、目の前にある巨大なクリスマスツリーのライトアップに負け、なんだか寂しげだった。
(…帰ろう)
独身の女がひとり、こんな場所で立ち尽くしていても虚しくなるだけだ。
早く家に帰って、温かいお風呂に浸かって、お気に入りの毛布に包まって眠ろう。
恋人がいなくたって、いいじゃないか。
男なんて、私とは真逆な人間である、可愛くて素直で従順な女の子ならば誰でも良いのでしょう。
私には彼しかいなかったけれど、彼にはたくさんの人がいる。
振り向けば羨望の眼差しを送る女がたくさんいるのだ。
彼を必要とする人は、私を含めてたくさんいるのだ。
この広い世界で、私を必要とする人はもういない。
このちっぽけな存在が消えようとも、誰も気にしはしない。気付きもしないのだ。
降り積もっていく雪のように、遊ばれ、退かされて終わる人生なのだ、私は。