鳴かない鳥
ただ、道行く男女を、私たちが恋人と決めつけているだけなのかもしれない。
本当のことなんて、私たちは何も知らないのに。
見たままのものを、勝手に決めつけているだけなのだろう。
「…シンプル イズ ベストだな」
私の目の前に居る、モノクロのカレンダーを手に取り微笑む彼も。
店内の窓辺から見えるツリーを見て微笑む家族も、手を繋ぐ男女も。
みんな同じ、この世界の片隅に生きる人間なのだ。
「少々地味では?」
「…シンプルなのが一番なんだよ。豪華に飾らなくていい。その方が、見やすいし」
_____この世界の中心がどんな場所なのかは分からないけれど。
きっと、無色透明で。ひたすらに綺麗なところなのだと私は思う。
「…知りもしないのに、失礼でしたよね」
「は?」
「いえ、何でもありません」
私から彼を奪ったあの女の子のことを、私は何も知らない。
名前すら知らない他人なのに、私は外見で自分の方が勝っていることを盾に彼女を卑下していた。