独占欲強めの王太子殿下に、手懐けられました わたし、偽花嫁だったはずですが!
プロローグ
「お前、俺と組まないか?」

 目の前にいるアーベルは、たしかにフィリーネにそう言った。思いがけない申し出に、フィリーネは目を瞬かせる。
 アーベルの花嫁選びに参加するという名目で訪れたアルドノア王国。けれど、フィリーネの目的は花嫁の座にはない。
 フィリーネが、参加を決意したのは、祖父の代からの悲願を達成するため。アーベルの妃という地位に興味のないフィリーネは、彼にとっては好都合な相手であるのかもしれない。

「というわけで、お前、俺の『お気に入り』になれ。三か月でいい」

 アーベルの申し出は、少しばかり勝手なものでもあった。だって、この国に集まっている令嬢達は皆、彼の妃に選ばれることを願っている。
 結婚生活に夢を抱いていない彼の目的は、「国のためになる伴侶を選ぶこと」だ。そのために、よけいな感情は不要なのだという。
< 1 / 267 >

この作品をシェア

pagetop