独占欲強めの王太子殿下に、手懐けられました わたし、偽花嫁だったはずですが!
「とにかく、お茶をお飲みなさいな。靴下問題は、そっちで解決してちょうだい」

 恋人達の問題には、口を挟まないに限る。

「はいはい。もう君には頼まない」

 ぷんとむくれたパウルスは、はっとしたように姿勢を正した。

「やばいやばい、アーベル王太子殿下がこっちに向かってる。じゃあ、僕はもう行くから!」
「もう行くからって……もうっ!」

 何も、こんな時に逃げ出さなくてもいいではないか。アーベルに見られてやましいことがあるわけじゃないし。
 視線を巡らせれば、アーベルがこちら側にゆっくりと歩いてくるところだった。彼の手には書類の束が抱えられている。

(……そうね。政務は待っててくれないものね)

 フィリーネを連れて歩くのだって、余計な時間を取られたくないからという理由でしかない。
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