独占欲強めの王太子殿下に、手懐けられました わたし、偽花嫁だったはずですが!
「お前……俺の都合も考えてるか?」
「アーベル様は、虫よけに私を使ってらっしゃるのでしょ、だったらがんがん虫よけしましょう! さあ、行きましょう!」
「いや、まあ……それはそうなんだが、な……」

 フィリーネの勢いに呑まれたようにアーベルは笑った。それから、フィリーネの方に手を差し出してくれる。

「じゃ、行くぞ。今、令嬢達が一番集まっているのはどこだ?」
「今日は、南の庭園で野外劇が上演されるらしいですよ。そこならきっとたくさんの女性が集まりますよ」

「——よし、そこに行くか。今、届いたドレスを着てくるといい」
「はいっ! ヘンリッカ、支度を手伝ってくれる?」

 隣の部屋で待機しているヘンリッカの方へと声をかける。ばたばたとやってきた彼女は、慌てて手を貸してくれて、フィリーネはあっという間に出かける支度を整えることができた。
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