独占欲強めの王太子殿下に、手懐けられました わたし、偽花嫁だったはずですが!
「フィリーネは積極的に噂をまくとはいっていたが、まさか、ここまでとは」
「お嬢様は、機を見る目をお持ちです。素晴らしい——ユリスタロ王国の王女殿下でなければ、わが店の宣伝に引き抜きたいくらいですよ」

 クラインは、フィリーネに感心しているようだった。アーベルの目の前で臆面もなくフィリーネを誉めちぎる。

「もちろん、洗練度という点では、まだこの国の女性には及びません——ですが、このドレスを身に着ければ、ますますお美しくなることでしょう! これは、私の感謝の気持ちです」

 彼が持参したのは、新しく仕立てたドレスだった。もちろん、ユリスタロ王国の特産品をあしらったもの。新しいこのドレスを身に着け、アーベルの側で宣伝してほしいということなのだろう。

 つまり、クラインの方もある程度の計算をした上で再度こちらに来たということになる。商魂たくましいというかなんというか。
 アーベルの方もクラインの目論見に反対する理由もなかったから、新しく届けられたドレスをフィリーネの部屋に運ばせる。
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