独占欲強めの王太子殿下に、手懐けられました わたし、偽花嫁だったはずですが!
 図書室には、他にも何人かの令嬢がいたけれど、皆、ライラの剣幕に驚いているようだった。誰もこちらには声もかけようとせず、自分の席に座ったまま、かたずをのんで見ているだけだ。

「……ユリスタロ王国は、我が国を敵に回したいのかしら?」

 ライラに掴まれた肩が痛い。人前でここまでの剣幕になる理由がわからなくて、フィリーネは怯えた。
 助けを求めて視線を巡らせるけれど、図書室の中にいる人達は、皆気まずそうに視線をそらすだけ。

 令嬢達を恨むつもりはない。たぶん、フィリーネだって彼女達と同じ立場に置かれたら、同じような行動をとるだろう。
 この状況で、ライラを敵に回すような真似をするはずはない。

「アーベル様に近寄らないで。さもないと——我が国に喧嘩を売っているものと解釈させていただくわ」
「それは……アーベル様と、約束を、したからで」

 別に悪いことをしているつもりもなかったけれど、ライラの剣幕についとぎれとぎれになってしまった。
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