独占欲強めの王太子殿下に、手懐けられました わたし、偽花嫁だったはずですが!
「それが許せないと言っているの。自分の立場をわきまえなさいよ!」
「か、返してください! 返して……それは、私の」

 けれど、フィリーネの肩からショールをはぎとったライラは、フィリーネが憎たらしいという目でこちらを見ただけだった。

「返して、って言ってるでしょう!」

 ここがどこであるのかも忘れ、フィリーネの方もつい大声になる。手を伸ばしたけれど、ライラは素早く後退した。

「……これだって、あなたには分相応だわ」
「だめです!」

 フィリーネが手を伸ばし、ライラは取り戻されまいと躍起になる。二人の間で、ショールが引っ張り合いになった。

「……あっ!」

 びりっと嫌な音が響いて、ショールが裂けてしまう。繊細なレースは、美しいけれど耐久性には欠けていた。 フィリーネは目を丸くする。

 ライラの方も、自分の行動に驚いたみたいだった。派手に裂けたせいでぼろぼろになったショールを掴んでいた手を放す。
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