独占欲強めの王太子殿下に、手懐けられました わたし、偽花嫁だったはずですが!
偽恋人が本当の愛をつかむ時
 なんだか、最近のアーベルはおかしい。気が付いたら、彼はいつもフィリーネの側にいる。フィリーネの周囲をうろうろしてる場合じゃないと思うのに。

 本人に聞けば、政務とか謁見とかはさっさとすませてこちらに来ているというから、あまり文句も言えないが、もう少し他の令嬢達にも気を配るべきじゃないかと思う。

 今日だって、裁縫室で持ってきたドレスの仕立て直しにいそしんでいるフィリーネの側に張り付いたまま。側でスカートの裾上げをしているヘンリッカが、その光景ににやにやとしている。

 他の令嬢に仕える侍女達も、フィリーネの仕立て直しているドレスやレースをチェックするために、裁縫室にいるのでにぎやかだ。そんな中、アーベルがフィリーネべったりなのは、ますます噂になってるらしい。

(花嫁選びが終わった後、どうするつもりなのかしら……)

 こんなにフィリーネべったりなのに、最終的に選ばれるのが他の女性なわけなのだから、選ばれた相手はどう思うんだろう。たとえば、ライラとかライラとかライラとか。
 頭の中で二人を並べてみたらものすごくお似合いだったので、フィリーネはぶんと頭を振ってその光景を追い払った。
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