独占欲強めの王太子殿下に、手懐けられました わたし、偽花嫁だったはずですが!
「馬車は用意できる? すぐに行かないと!」
「じゃあ、続きは私がやっておくから、二人で行ってらっしゃい——じゃなかった、行ってらっしゃいませ」
一応侍女として側に控えているはずのヘンリッカだが、アーベルの前でぼろぼろ素が出ている。裁縫室には、他の令嬢に仕えている侍女達もいるのにこの調子なので、今さらなのかもしれない。
パウルスが馬車の用意に向かい、フィリーネは後を追いかけようとする。廊下の途中で、後ろから追いかけてきたアーベルに腕を掴まれた。
「あいつと一緒に行く必要ないだろう? お前のいとこなら、信頼できるし、あいつにまかせれば十分だろうに」
「馬鹿なこと、言わないでください。私は、クラインさんにちゃんと礼儀は守りたいの。私がこの国にいるのに、パウルスに行かせるなんて失礼な真似できないわ」
「パウルス、パウルスって——お前、いつもパウルスのことばかりだな!」
「あたりまえでしょう! パウルスがいなかったら、私、どうしたらいいかわからないわ!」
アーベルがなんでこんなに突っかかってくるのか、フィリーネにはさっぱり理解できなかった。パウルスと一緒にいるのなんて、フィリーネにとっては当たり前のことなのに。
「じゃあ、続きは私がやっておくから、二人で行ってらっしゃい——じゃなかった、行ってらっしゃいませ」
一応侍女として側に控えているはずのヘンリッカだが、アーベルの前でぼろぼろ素が出ている。裁縫室には、他の令嬢に仕えている侍女達もいるのにこの調子なので、今さらなのかもしれない。
パウルスが馬車の用意に向かい、フィリーネは後を追いかけようとする。廊下の途中で、後ろから追いかけてきたアーベルに腕を掴まれた。
「あいつと一緒に行く必要ないだろう? お前のいとこなら、信頼できるし、あいつにまかせれば十分だろうに」
「馬鹿なこと、言わないでください。私は、クラインさんにちゃんと礼儀は守りたいの。私がこの国にいるのに、パウルスに行かせるなんて失礼な真似できないわ」
「パウルス、パウルスって——お前、いつもパウルスのことばかりだな!」
「あたりまえでしょう! パウルスがいなかったら、私、どうしたらいいかわからないわ!」
アーベルがなんでこんなに突っかかってくるのか、フィリーネにはさっぱり理解できなかった。パウルスと一緒にいるのなんて、フィリーネにとっては当たり前のことなのに。