独占欲強めの王太子殿下に、手懐けられました わたし、偽花嫁だったはずですが!
「——フィリーネ姫を守れなかった身で、こんな申し出をするのは——恐縮なのですが。フィリーネ姫との結婚を許していただけませんか」
「ちょ、何言ってるんですか!」

 今、完全にフィリーネの頭から行儀とかマナーとかそういう単語は抜け落ちた。アーベルとの契約は、花嫁選びの期間が終わるまでの限定的なものではなかったのか。

 だいたい、結婚の申し込みを本人ではなく、両親にするというのはどういうわけだ。口を開いたり閉じたりしていると、父はあっさりと許可を出してしまった。

「——わが娘でよければ喜んで」
「ちょっとお父様!」

 あまりにもあっさりと父が承諾の許可を出したものだから、フィリーネは悲鳴じみた声を上げた。父には、冷静に考えてほしい。
 だって、フィリーネは両親の唯一の娘。女王となって、婿を取らねばならないのに——。

「そんな、簡単に喜んでなんて言ってるけど、この国の王座はどうするのよ!」
「お前、女王になりたかったのか?」

 父の言葉に、フィリーネは言葉につまってしまう。
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