独占欲強めの王太子殿下に、手懐けられました わたし、偽花嫁だったはずですが!
「なんだ、まだここにいたのか」
「アーベル様」

 今日のアーベルは、フィリーネと同じように白の正装を身に着けている。その姿が眩しくて、一瞬視線をそらしてしまった。
 だって、彼にドキドキしていると知られるなんて、なんだか負けたような気がする。

 ——でも。

「行くぞ」

 アーベルは迷うことなく手を差し出す。フィリーネはその手を取った。

 結局、王位の継承権はフィリーネが持ったままだ。ユリスタロ王国の王太子兼アルドノア王国王太子妃だ。

 さすがに王位を簡単にあげてしまうのはどうかということになり、フィリーネが即位する時がきたとしたら、その時はパウルスが王家の代理人を務めてくれるということで話をつけた。

 ——三乙女のレースを身に着けると、恋がかなうだけではなくて幸せになることができる。

 いつの間にか、そう言い伝えられるようになっているのをフィリーネは知らない。

 そして、この日。

 フィリーネは世界一幸せな花嫁となった。
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