独占欲強めの王太子殿下に、手懐けられました わたし、偽花嫁だったはずですが!
貧乏姫が、王太子妃候補に選ばれた?
 アーベルが両親に呼び出されたのは、二十三歳の誕生日をもうすぐ迎えるある冬の日のことだった。

「お前が結婚しないというから、周辺諸国の令嬢達に招待状を出した。春になったら、皆がここに集まる。一番気の合いそうな女性を選ぶといい」
「——選ぶといいって、馬を選ぶんじゃあるまいに」

 アーベルは、どうも恋愛が苦手だ。
 そうなったのは物心ついた頃から、いずれはこの大国を背負うという自負があったからかもしれない。彼の頭の中にあるのは、自国をより発展させるためにはどうしたらいいのだろうということだけ。
 もちろん、彼に好意を寄せてくれる女性がいなかったわけではないが、どうにも気が進まないというかなんというか。言葉は悪いが、面倒だの一言に尽きる。

「父上と母上がよさそうな女性を見繕ってください。どうせ、国のために一番いい相手を選ぶのが正解なんでしょう」
「まったく、お前ときたら——! どうしてこう可愛げがなくなってしまったんだ」

 額に手をあてて父が悩ましいため息を吐いた。どうしてと言われても、可愛げがないと言われても困る。
 だいたい二十歳を過ぎたいい大人なのだから、可愛げなんてどこかに置いてくるべきではないだろうか。
< 3 / 267 >

この作品をシェア

pagetop