独占欲強めの王太子殿下に、手懐けられました わたし、偽花嫁だったはずですが!
◇ ◇ ◇
園遊会に出る支度を整えながら、アーベルはため息をついた。結局、両親は令嬢達の招待を諦めなかった。
まずは歓迎の園遊会だ。
挨拶のためにアーベルが登場しただけで、令嬢達の視線が一気にこちらに突き刺さる。色鮮やかなドレスを着た彼女達は、たしかにとても美しい女性ばかりだった。
(嫌というわけじゃない、ただ——何の目的もない集まりは苦手だ)
それでも、生まれてから培った万能の微笑みで令嬢達の相手をしていたら、一人だけ彼の側には来ず、菓子のテーブルに張り付いているのが目に入った。
(あいつ、なんであんなところにいるんだ?)
全員の肖像画を確認し、名前と、生い立ちについて記されたリストは完璧に頭に入っていた。アーベルは、頭の中でそのリストをめくって、目指す相手を見つけ出す。
(ユリスタロ王国の、フィリーネ・ヴェシサーリ——だったな)
可愛らしい園遊会用のドレスは彼女に似合っているが、多少流行遅れなのは、たぶん、ユリスタロ王国があまり裕福ではないことと、こちらの流行が少し遅れてユリスタロ王国に届くからだろう。