独占欲強めの王太子殿下に、手懐けられました わたし、偽花嫁だったはずですが!
「これで、お前のレースにも、彼女達の目が集中するだろ」
「いろいろ気を使っていただいたみたいですみません……」
まさか、契約したあの時には、ここまで気を使ってもらえるとは思ってなかったのだ。なんだか、彼の負担の方が大きかったみたいで、ちょっと申し訳ない。
フィリーネの手にした籠の中には、レース編みの道具が一式入っている。何もしないでいるのは落ち着かないので、常に手を動かすことにしているのだ。
「このあたりでいいか」
アーベルが腰を下ろすことにしたのは、散歩道から少し離れた場所にあるベンチだった。少し離れてはいるが、行き来する人の目には確実に見えるであろう場所だ。よくもまあ、こんな場所を見つけ出してきたものだと逆に感心してしまった。
フィリーネはさっそく籠の中から編針を取り出すと、アーベルにはかまわず手を動かし始めた。
「アーベル様、何かしゃべってください」
「お前、俺といる時に手を動かすな!」
「やめてください! もうっ——これ、いいお小遣いになるんですから! もー、今年はこっちに来ることになったから、時間が足りないんですよ」
「いろいろ気を使っていただいたみたいですみません……」
まさか、契約したあの時には、ここまで気を使ってもらえるとは思ってなかったのだ。なんだか、彼の負担の方が大きかったみたいで、ちょっと申し訳ない。
フィリーネの手にした籠の中には、レース編みの道具が一式入っている。何もしないでいるのは落ち着かないので、常に手を動かすことにしているのだ。
「このあたりでいいか」
アーベルが腰を下ろすことにしたのは、散歩道から少し離れた場所にあるベンチだった。少し離れてはいるが、行き来する人の目には確実に見えるであろう場所だ。よくもまあ、こんな場所を見つけ出してきたものだと逆に感心してしまった。
フィリーネはさっそく籠の中から編針を取り出すと、アーベルにはかまわず手を動かし始めた。
「アーベル様、何かしゃべってください」
「お前、俺といる時に手を動かすな!」
「やめてください! もうっ——これ、いいお小遣いになるんですから! もー、今年はこっちに来ることになったから、時間が足りないんですよ」