独占欲強めの王太子殿下に、手懐けられました わたし、偽花嫁だったはずですが!
「——あいつらが気にしているのは、俺の身分と財力だけだからな」
「ああ、とっても魅力的な条件ですもんね」

 フィリーネは実感がわかないのだが、王太子という身分と財力は魅力的だと思う。

「魅力的な条件とか言うな!」
「痛い!」

 ぴしっと額を弾かれた。
 この間の夜も同じようなことがあったが、おもしろくない。むぅっと口角を下げたら、彼は深々とため息をついた。

「向こうが身分と財力しか見てないんだから、俺もこの国のために一番いい相手と結婚すればいいだろ? そして、それを決めるのは俺じゃない」
「……そういうものでしょうか」

 フィリーネ自身、あまり興味がないから今まで放置してきたけれど、今のところ、フィリーネには縁談が来ていない。パウルスをはじめご近所の結婚適齢期の男性は、皆相手が決まっているので国内で相手を見つけるのは難しいのだ。いずれ、両親が外国から婿入りしてくれる人を連れてきてくれるのではないかと思っているが、両親もなんだかのんびりしているので、そのままにしてしまっていたのである。
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