独占欲強めの王太子殿下に、手懐けられました わたし、偽花嫁だったはずですが!
恋心の前になすべきことは
 今夜のために用意したのは、鮮やかな赤いドレスだ。
 フィリーネは鏡の前でくるりと回ってみる。レースとフリルをたっぷりあしらったドレスは、フィリーネの髪の色を綺麗に見せてくれた。

「——約束は約束だけど、気が重いのよねぇ」
「頑張って。だって、フィリーネ様のドレス、割と評判になり始めてますよ」

 アーベルとしばしば出歩いているせいで、フィリーネは自分のドレスに注目が集まっているのは知っている。

 他の令嬢と一緒に来た侍女達と仲良くなったヘンリッカは、フィリーネがアーベルの目に留まったことを引き合いに出して、「うちの姫様のドレスには魔法がかかっている」なんて、根も葉もないことを広めているらしい。
 パウルスも同じように従僕仲間に広めているらしく、フィリーネ本人に対する好奇心はむくむくと大きくなっているらしいが、それだけでは意味がない。

「評判になっているならいいけれど。まだ、レースの買取をしたいって話はどこからもないのよね。どこかのお姫様が気に入ってくれればいいのに。ああ、やっぱり、あの時ライラ様を捕まえられなかったのが敗因なんじゃないかしら」

 自分も��お姫様�≠ナあることは、完全にフィリーネの頭からは消え失せている。
 アーベルと一緒に初めて出た舞踏会で、ライラと話をする機会を得た時、もっと一生懸命売り込んでおけばよかった。
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