独占欲強めの王太子殿下に、手懐けられました わたし、偽花嫁だったはずですが!
アーベルとダンスをするのももう慣れた。最初のうちは、彼の足を踏んでしまわないかうろたえていたけれど、今ではちゃんと笑顔を作ることだってできている。
「やれやれ、さすがにお前一人の相手をしているわけにもいかないか。ちょっと行ってくる」
「……どうぞ」
これが恋人ならたぶんやきもちの一つや二つ焼くところなのだろうが、あいにくアーベルとの関係はそんなものではない。ちょうど喉も乾いたし、会場の隅で休もうとそちらに向かっていたら、背後に人の立つ気配がした。
振り返ってみれば、そこに立っていたのは王太子妃候補のライラだった。フィリーネのことが気に入らないらしく、こちらをじっとりとにらんでいる。
(そうよ、今こそチャンスじゃないの!)
前回は、アーベルに途中で邪魔されてしまった。だが、せっかくの機会だ。この間誉めてくれたお礼を言ってライラになんとか売り込んで——。
けれど、友好的にライラと距離を詰めようとするフィリーネのその目論見はあっさりとうち砕かれた。
「やれやれ、さすがにお前一人の相手をしているわけにもいかないか。ちょっと行ってくる」
「……どうぞ」
これが恋人ならたぶんやきもちの一つや二つ焼くところなのだろうが、あいにくアーベルとの関係はそんなものではない。ちょうど喉も乾いたし、会場の隅で休もうとそちらに向かっていたら、背後に人の立つ気配がした。
振り返ってみれば、そこに立っていたのは王太子妃候補のライラだった。フィリーネのことが気に入らないらしく、こちらをじっとりとにらんでいる。
(そうよ、今こそチャンスじゃないの!)
前回は、アーベルに途中で邪魔されてしまった。だが、せっかくの機会だ。この間誉めてくれたお礼を言ってライラになんとか売り込んで——。
けれど、友好的にライラと距離を詰めようとするフィリーネのその目論見はあっさりとうち砕かれた。