独占欲強めの王太子殿下に、手懐けられました わたし、偽花嫁だったはずですが!
「ちょっと、あなた」
「聞いてます? ライラ様! このレースは我が国の職人達が」

「誰もそんな話は聞いてないでしょ! だいたい、どうしてあなたみたいな小国の王女がアーベル様の隣にいられるの? 分相応って言葉を知らないのかしら」

「それは、わかっているんですけど! 今、私がお話したいのはそこではなく!」

 わかっているから、最初からアーベルには近づく気もなかった。彼の『お気に入り』、として振る舞っているのも自国の産業を売り込むためで。
 けれど、ライラの耳にはフィリーネの弁明なんて届いていないみたいだった。

「わかっているのなら、身を引いてくださる? あなたは、アーベル様にはふさわしくないのだから」
「それはそれ、これはこれです。ライラ様。話だけでも」

 アーベルの王太子妃という地位には興味がないと、ライラに話をすれば——話を聞いてくれるだろうか。どうせ、アーベルとはただの契約の関係でしかないのだから。
 フィリーネとアーベルが本気で付き合っているわけではないと周囲の人に知られたら面倒なことになる。
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