独占欲強めの王太子殿下に、手懐けられました わたし、偽花嫁だったはずですが!
「そんな流行遅れの品でここに来るなんて、恥ずかしくないのかしら」
「一応、仕立て直しました。それですね、それはともかくとして、このレース」

 ここでめげているわけにはいかない。再度言葉を重ねようとしたら、さらにぴしゃりと遮られた。

「おだまりなさい」

 ライラは、フィリーネの話を聞いてくれるつもりなんてまるでないようだ。このオチは全く想定していなかったから、困ってしまった。
(……どうしたら、わかってもらえるかしら……)
 フィリーネが口を開こうとした時、すっと後ろに腕を引かれた。

「ライラ、フィリーネがどうかしたのか?」
「い、いえ……」

 アーベルがこちらに戻ってきたのを見たとたん、ライラは気がそがれたように視線を落とした。それからくるりと向きを変えて、その場から半分逃げ出すみたいにして去る。

「何があった?」
「別に何もないですよ! ああ、あともうちょっとだったのに……アーベル様が邪魔するから! 話が途中で終わってしまったじゃないですか!」
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