独占欲強めの王太子殿下に、手懐けられました わたし、偽花嫁だったはずですが!
 返答に困り、フィリーネは目をうろうろと泳がせた。アーベルの隣に立つのにいまいちな品質のドレスしか持っていないのはどうしようもないし、彼に釣り合わないのもどうしようもない。

「——俺も気になってたんだよ。俺の隣に立つのに貧相すぎるってな。お前が『お気に入り』という印象がついてきたようだから、そろそろ贈り物をしてもいい頃あいだ。安心しろ、お前が本命に見えるような高価な品は贈らないから」

 なんというか、アーベルはしたたかだ。まさかそこまで計算していたとは思わなかった。

「言いたい放題ですね! アーベル様!」

 とはいえ、これ以上アーベルに逆らうのも得策ではなさそうなので、おとなしく街に連れていかれる約束だけはした。
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