独占欲強めの王太子殿下に、手懐けられました わたし、偽花嫁だったはずですが!
「私の国より大きいし、人もたくさんいるし、本当にこの国は栄えていますよね」

 隣に座っているアーベルのことはなるべく気にしないようにして、フィリーネは窓にはりつくようにして眺めていた。
 アルドノア王国はユリスタロ王国よりだいぶ暖かいからか、道を行く人達の身に着けているものは明るい色合いで、全体的にふわっとした優しい雰囲気だ。

「こんなものだと思うけどな」
「今、この通りを歩いている人だけで、ユリスタロ王国の総人口、軽く上回っていると思いますよ」

 本当に、この国はフィリーネの国と比較すると比べ物にならないくらい栄えている。街だって、にぎやかだし——それを見ていたら、不意に胸のあたりが苦しくなった。

 フィリーネの国、ユリスタロ王国は歴史だけは長い。昔は、大陸全土を支配していたのも本当のことだ。
 今、馬車を走らせているこの通りだって、三百年前にはユリスタロ王国の一部だったわけで。

(……このくらいとまではいかなくても、いつか、もう少し国をにぎやかにすることができたら)
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