記憶のかけら
藍染
洗い物を手伝っているとき、気が付いた。

よし乃さん、なんか髪が碧く見えるんですけど??



髪のことばかり気にしてるから?苦笑

光のせいかも?

でも光の加減で色が変わる感じ。

アッシュみたいで、良いわ~


「よし乃さん、髪どうしたんですか?」聞いてみると、

恥ずかしそうに「染めています…」と言う。



なんですと!?



「なんで?どうやって?」

切羽詰まって聞く私に、ドン引きする、よし乃さん。

聞けば、実家が紺屋をしているという。



なにそれ??



紺屋を知らない私に、逆に驚くよし乃さん。

藍染を生業にする家を紺屋と呼んでいること。

あちこちの村に普通にあって、

鍛冶屋や桶屋と同じく珍しい職業でないこと。



生地を染める藍と言えばインディゴブルー!!

ジーンズを染めてる染料のこと?!

藍の原料は身近に生えている植物で、

簡単に手に入ると言う。



私の時代にも紺屋町って地名があった。

そうなんだと一人納得。

でもどうして毛染めできるの?

藍はオーガニックの「ヘナ」みたいなの?



聞けば、

藍染をするとき、手に染料が付いて、

爪や指先が染まることから着想を得て、

藍染の藍に薬草を混ぜ、

髪に吸着させて毛染めをしていることを、

丁寧に教えてくれた。

よし乃さん曰く、

「作り方は内緒ですよ。」といたずらっぽく笑う。



素晴らしい!

そんな方法があったの?

「お願い!私にも是非やってください!」

強引で我儘なお願いをする。

作り方は企業秘密で構わないから(笑)



驚くよし乃さんだったけど、

女同士美しくなりたい気持ちは伝わって、

毛染めをしてくれることになった。

嬉しい!!ありがとう!



よし乃さんに、カラーリングをしてもらいながら、

お舘さまのこと、櫻正宗のことを教えてもらった。



お舘さまには昔、許嫁がいたらしい。

お舘さまが人質に出されるにあたり、婚約は解消されていた。



結婚は一度だけ。

家督を継いだ時に政略結婚。

奥様が実家の力をかさに、

常に櫻正宗を格下に見ていたらしい。

あげくに実家が攻めてきて、

お舘さまが鎮圧して奥方とは離縁。

今は他家へ嫁がれてるようだ。



「まさか櫻正宗の家がこんなにも強大になるとは、

思ってなかったことでしょう。

お舘さまに未練は全くなさそうです。」とよし乃さん。

お世継ぎはまだいない。



背が高く顔はイケメン、

性格は大胆不敵で弱い者には優しく、

戦で負け知らずの独り身の領主が、

モテないわけがない。

領地内外の娘たち憧れの存在らしい。



周辺諸国も、戦で叶わないのであれば、

豊かなこの地と姻戚関係を結びたいと願って、

常に縁談が持ち込まれてきていること。



現在は、

須磨の異母兄弟秀雅様からは、

瀬戸内海の水軍の娘との縁談が、

芦屋の叔父上秀宗様からは、

大阪の豪族の娘との縁談が、

持ち込まれているとか、いないとか。



もう、本当に詳しく

芸能ニュースのように、

女性誌のように、

憧れの芸能人の話をするように、



よし乃さんもかなりのファンとみた。



一度に大量の情報が真由美にインプットされ、

いっぱいいっぱいになっていた。



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