記憶のかけら
口づけ
6月がもう終わる。
月が満ちて、今夜は満月、
ストロベリームーンだ。
去年、恋を叶えてくれる満月だからって、
相手もいないのにお祈りしたっけ(笑)
たくさん良い写真が撮れて嬉しい。
気持ちのいい潮風が頬にあたる。
高台に腰掛けて、
もうすぐ七夕だなと考え、
ぼんやり月を見ていた。
そろそろ帰らなきゃ。と立ち上がる。
馬の蹄音が聞こえた。
坂を駆け上ってきたのは、
馬に跨がったお舘さま。
「ここにいたのか!」
馬から飛び降りて、
駆け足で、
大声で、
近づいてくる大きな男。
お舘さま…?!
「ここで何をしている!」
かなりお怒りの様子
「写真を撮っていま…」
腕を掴まれ、最後まで言葉にならない。
お舘さまが側にきたと思う間もなく、
「お主は時々解らぬことを言う」と言い、
力一杯に抱きしめられた。
急にやってきて、
怒鳴られ、
怒られ、
思いっきり抱きしめられた。
くるしい。
「?????」
どうして?
「お主を探していた。もう心配させるな。」
何をそれほど怒ってるの?
「なんで?」
何をそんなに心配してるの?
お舘さまは返事の代わりに口づけをした。
最初は乱暴に、激しく、そして優しく。
瞬間身体に力が入って押し返そうとしたが、
力ではかなわない。
徐々に力が抜けていった。
しばらくしてから
勇気を出して小さな声で、
「あやさんのことは?」と聞けば、
「あや殿?」と
怪訝けげんな顔のお舘さま。
おそるおそる
「結婚はしないの?」と重ねて聞く。
お舘さまは大笑いして、
「お主と夫婦になりたいと思っておるのに
他の女子に用はない」と言う。
いま、なんて言ったの?
信じられない。
そして、
「どこにも行くな。」
「行かないと約束してくれ。」
と言う。
真由美は混乱して、
しばらく黙っていた。
お舘さまの言葉がよく理解できない。
どういうことなんだろう?
告白されたの?
さっき私にプロポーズした?
頭の中でぐるぐるこだまする。
黙り続ける私に
「お主の返事を聞くのが恐ろしい。」と言う。
お舘さまの真剣な様子が伝わるけど、
言葉が見つからない。
考えて…
考えて…
やっと出た言葉…
「これが私の好きなもの」と言って、
携帯の写真画面を開く。
驚いて画面を見るお舘さま。
画面には
にぎやかな街の様子や、
子どもや領民達の笑顔が次々現れ、
庭に咲いていた小さなユリの花、
最後に
視察中のお舘さまが笑っていた。
以前、拐われる前に、
着物の袂から携帯を取り出し、
隠し撮りした貴重な一枚だ。
お舘さまは自分を指差して、
「これは…」と絶句している。
私は黙ってうなずいて、
「そう、私の好きな人」と答えた。
お舘さまも多分
考えて…
考えて…
「そうなのか…?
好きな人…か?!
そうか!?
そうなのか!!」
見たこともない嬉しそうな笑顔で、
うぉー!!!!!!!と
拳を、両手を挙げて
大声で吠えた。
雄叫びをあげる人って、
サッカーの試合でしか見たことないんですけど…(笑)
お舘さまのいつもの余裕ある姿からは考えられない、
感情が爆発した瞬間だった。
しばらくの沈黙から
二人顔を見合せて、
どちらからともなく
クスクス笑いだした。
お互いの気持ちが通じあう。
どちらも
嬉しいのと恥ずかしいのと
でもやっぱり
嬉しい気持ちでどんどん満たされてく。
満月が優しく二人を照らす。
二人が出会ったのは、
偶然か?必然か?と聞かれれば
間違いなく「必然」と答えられる。
何か少しでも違ったら、出会わなかった。
存在を心に留めることもなかった。
気持ちが通うこともなかった。
無駄と感じたことも、
きっと意味があって、
今に続いてきたに違いない。
そう信じたい。
お舘さまの望む世界を、
一緒に切り開いてみたい。
私の出来る事をやり抜いて、
同じ時を紡いでいきたい。
私は私なりに、
この時代を精一杯生き抜く。
時空を超えて、
愛する人と共に、
記憶のかけらとなって、
力いっぱい生きていく。
月が満ちて、今夜は満月、
ストロベリームーンだ。
去年、恋を叶えてくれる満月だからって、
相手もいないのにお祈りしたっけ(笑)
たくさん良い写真が撮れて嬉しい。
気持ちのいい潮風が頬にあたる。
高台に腰掛けて、
もうすぐ七夕だなと考え、
ぼんやり月を見ていた。
そろそろ帰らなきゃ。と立ち上がる。
馬の蹄音が聞こえた。
坂を駆け上ってきたのは、
馬に跨がったお舘さま。
「ここにいたのか!」
馬から飛び降りて、
駆け足で、
大声で、
近づいてくる大きな男。
お舘さま…?!
「ここで何をしている!」
かなりお怒りの様子
「写真を撮っていま…」
腕を掴まれ、最後まで言葉にならない。
お舘さまが側にきたと思う間もなく、
「お主は時々解らぬことを言う」と言い、
力一杯に抱きしめられた。
急にやってきて、
怒鳴られ、
怒られ、
思いっきり抱きしめられた。
くるしい。
「?????」
どうして?
「お主を探していた。もう心配させるな。」
何をそれほど怒ってるの?
「なんで?」
何をそんなに心配してるの?
お舘さまは返事の代わりに口づけをした。
最初は乱暴に、激しく、そして優しく。
瞬間身体に力が入って押し返そうとしたが、
力ではかなわない。
徐々に力が抜けていった。
しばらくしてから
勇気を出して小さな声で、
「あやさんのことは?」と聞けば、
「あや殿?」と
怪訝けげんな顔のお舘さま。
おそるおそる
「結婚はしないの?」と重ねて聞く。
お舘さまは大笑いして、
「お主と夫婦になりたいと思っておるのに
他の女子に用はない」と言う。
いま、なんて言ったの?
信じられない。
そして、
「どこにも行くな。」
「行かないと約束してくれ。」
と言う。
真由美は混乱して、
しばらく黙っていた。
お舘さまの言葉がよく理解できない。
どういうことなんだろう?
告白されたの?
さっき私にプロポーズした?
頭の中でぐるぐるこだまする。
黙り続ける私に
「お主の返事を聞くのが恐ろしい。」と言う。
お舘さまの真剣な様子が伝わるけど、
言葉が見つからない。
考えて…
考えて…
やっと出た言葉…
「これが私の好きなもの」と言って、
携帯の写真画面を開く。
驚いて画面を見るお舘さま。
画面には
にぎやかな街の様子や、
子どもや領民達の笑顔が次々現れ、
庭に咲いていた小さなユリの花、
最後に
視察中のお舘さまが笑っていた。
以前、拐われる前に、
着物の袂から携帯を取り出し、
隠し撮りした貴重な一枚だ。
お舘さまは自分を指差して、
「これは…」と絶句している。
私は黙ってうなずいて、
「そう、私の好きな人」と答えた。
お舘さまも多分
考えて…
考えて…
「そうなのか…?
好きな人…か?!
そうか!?
そうなのか!!」
見たこともない嬉しそうな笑顔で、
うぉー!!!!!!!と
拳を、両手を挙げて
大声で吠えた。
雄叫びをあげる人って、
サッカーの試合でしか見たことないんですけど…(笑)
お舘さまのいつもの余裕ある姿からは考えられない、
感情が爆発した瞬間だった。
しばらくの沈黙から
二人顔を見合せて、
どちらからともなく
クスクス笑いだした。
お互いの気持ちが通じあう。
どちらも
嬉しいのと恥ずかしいのと
でもやっぱり
嬉しい気持ちでどんどん満たされてく。
満月が優しく二人を照らす。
二人が出会ったのは、
偶然か?必然か?と聞かれれば
間違いなく「必然」と答えられる。
何か少しでも違ったら、出会わなかった。
存在を心に留めることもなかった。
気持ちが通うこともなかった。
無駄と感じたことも、
きっと意味があって、
今に続いてきたに違いない。
そう信じたい。
お舘さまの望む世界を、
一緒に切り開いてみたい。
私の出来る事をやり抜いて、
同じ時を紡いでいきたい。
私は私なりに、
この時代を精一杯生き抜く。
時空を超えて、
愛する人と共に、
記憶のかけらとなって、
力いっぱい生きていく。