"鬼"上司と仮想現実の恋
「田中君、ありがと。
助かった。」

私がお礼を言うと、

「別に。」

と答える。

今、ここで断ったら、失礼かな?

「あのさ、この間の」
「じゃ、俺、トイレ寄ってくから。」

田中君は、私の言葉を遮って、いなくなってしまった。

タイミング、悪いなぁ…


私は、部長の所へ行って、

「何か、ご用でしたでしょうか?」

と聞くと、

「いや、何でもない。」

と言われた。

「え? 田中君に部長が呼んでるって
言われたんですけど。」

「ああ、呼んだだけ。」

「は?」

「なかなか席に戻ってこないから、昨日の事、
根掘り葉掘り聞かれて困ってるんじゃないか
と思って、呼んでみた。」
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