"鬼"上司と仮想現実の恋
帰りの電車で、隣り合わせに座りながら、私は口を開いた。

「田中君、あのね、この前、言ってくれた事
なんだけど…」

田中君の体が、少し、ピクって固くなった気がした。

「私、やっぱり、田中君の事、友達以上には
思えない。
っていうか、田中君は、私の中で、1番信頼
できる友達なの。
できれば、このままでいたいと思うんだけど、
それじゃダメかな?」

田中君は、隣の私をまっすぐ見て、その後、視線を目の前の床に向けて、

はぁ………

と、ため息をついた。

それから、一呼吸おいて、言った。

「知ってたよ、瀬名が俺を友達としか見て
ないって事。
だから、ずっと黙ってたんだけど、部長が
現れて、焦ったんだな、俺。
石原には、全然、焦んないだけどなぁ。
ははっ」

と笑った。
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