"鬼"上司と仮想現実の恋
悠貴さんの全開の営業スマイルに母はメロメロだ。

「まあまあ、ようこそ起こしくださいました。
上がってお茶でもいかがですか?」

「ありがとうございます。
せっかくですが、この後出掛ける予定が
ありますので、また改めてご挨拶に伺います。
今日は暁里さんをお借りしてもよろしい
ですか?」

悠貴さんは、にっこり微笑む。

「あ、こんなのでよければ、どうぞどうぞ。」

と母に押し出される。

「お母さん、こんなのって、ひどくない?」

私は抗議するが、全く取り上げられる事はなく、家から追い出された。

「いってらっしゃい。」

母はにこにこ笑って手を振った。

私は助手席でぼそっと言った。

「あれ、絶対、悠貴さんに手を振ってるし。」

私が不機嫌な顔をしてると、悠貴さんが笑った。

「くくっ
暁里のお母さん、暁里にそっくりだな。」
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